開催レポート

    AnisongJapan Supported by リスアニ! 22日
  • 情熱のアニソン史70's~80's「MIQ~希代のアニソンアーティスト」

     アニメ音楽専門雑誌「リスアニ!」とのコラボレーション企画である「AnisongJapan」。「傑作OP&EDテーマ映像集」の上映やDJタイムなど、さまざまな形でアニメソングを楽しむことができたこのスペースでは、2日間に渡ってアニメソングの歴史を振り返るトークイベントも開催された。第1回のテーマは、現在まで連なるアニメソングの礎を築いた1970~80年代について。その時代を生きた証人としてゲストに招かれたのは『聖戦士ダンバイン』『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の主題歌で知られるアニソンディーヴァのMIQさん。司会は「リスアニ!」編集長・西原史顕さん、同副編集長・澄川龍一さん、音楽評論家・冨田明宏さんの“リスアニ!レコMEN's”が務めた。
     イベントの冒頭ではMIQさんの代表曲のひとつ「エルガイム-Time for L-GAIM-」(『重戦機エルガイム』前期OPテーマ)を聴きながらトークを展開。1984年にリリースされたこの曲は作詞を売野雅勇氏、作曲を筒美京平氏という、邦楽のヒットメーカーがそれぞれ手掛けた作品でもあった。これは「アニソンをアニメファン以外の人にも聴いてもらおう」という、当時のアニソン業界がめざしていた方向性の表れであったとMIQさんは振り返る。実際、この時期はアニメ主題歌でもヒットチャートの上位にランクインする曲が登場するなど、アニソンに対する注目度が徐々に高まりつつあった。そんな時代から現在に至るまで、イベントやライブでアニソンファンと接してきたMIQさんは「ファンの熱さは当時も今も変わらない。ずっと熱いままです!」と言って会場を盛り上げた。
     また、当時と現在のレコーディング環境の違いにも触れられ、現在のように打ち込みが主流ではない、生の演奏が当たり前だった時代を懐かしむ場面も。ボーカルのレコーディングも細かくつないで録っていくのではなく、“一発録り”をしていたとのことで、「GET IT!」(『ザブングルグラフィティ』イメージソング)がテイクワン(最初に歌ったもの)を採用して収録しているというエピソードには司会者一同も驚きを隠せなかった。
     アニソンの原点を作った1970年代の魂を受け継ぎながらも、時代の変化に合わせてアニソン自体も変容していった1980年代。ここからまたアニソンは新たな進化の時代を迎えることになるが、この続きは第2回の「アニソン史」にて語られることになる――。

    原稿執筆:仲上 佳克

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  • 熱狂のアニソン史90's「林原めぐみ~声優アーティストの誕生」

     過去から現在までのアニメソングの歴史を振り返るトークイベント。第2回は1990年代に焦点を当て、主に声優アーティストのムーブメントについて迫る内容となった。ゲストは『新世紀エヴァンゲリオン』綾波レイ役、『ポケットモンスター』ムサシ役、『名探偵コナン』灰原哀役など数多くの代表作を持つ声優の林原めぐみさん。90年代の10年間でシングル22枚、アルバム9枚をリリースするなどアーティストとしての顔も持つ林原さんは、この時代に巻き起こった第3次声優ブームの立役者ともいうべき人物である。
     90年代はアニメソングにJ-POPのアーティストが多く参入し、そこからヒット曲が生まれた時代でもあった。その中で、声優である林原さんが歌った主題歌がチャートの上位に食い込むというのは画期的な出来事だったのだ。林原さん自身「オリコンの上位に入ることが信じられなかった」という熱狂の時代を生み出す契機となった作品『スレイヤーズ』の話題からトークはスタート。当時はラジオドラマ全盛の時代であり、CD化する際には声優が歌唱を担当した歌が収録されることが多く、それが今でいうキャラクターソングの走りになったという。その流れでTVアニメ『スレイヤーズ』でも林原さんが主題歌を担当することになり、特に第2期シリーズ『スレイヤーズNEXT』のOPテーマ「Give a reason」は大ヒットを記録。林原さんはレコーディング当時のことはあまり覚えていないとしながらも、アフレコ現場の熱気を思い出し「番組の面白さが主題歌を持ち上げてくれた。みんなが共感するだけのドラマ性が『NEXT』にはあったと思う」と振り返った。
     また、林原さんは自身の楽曲で作詞を手掛けることも多々あるが、そのきっかけを作ったのも『スレイヤーズ』だという。シリーズが長期化するにつれ、自身が演じる主人公リナ=インバースの思いを自らの言葉で表現したいと考えるようになった林原さんは劇場版『スレイヤーズRETURN』の主題歌「Just be conscious」で作詞に挑戦。そこにはラジオパーソナリティーとしても活動する林原さんの「私がリナからもらった強さを、みんなに返したい」という思いも込められていたそうだ。
     こういった林原さんの活躍により、2000年代以降~現在に至るまで声優アーティストが次々と誕生することになる。そんな後輩たちの姿を見ていて「コンサートや写真集など、本当にいろいろなことをしなくてはいけないので大変だと思う」という林原さん。声優アーティストに求められるものがだんだんと変わってきているなかで、その原点たる林原さんの音楽活動に対する姿勢を聞くことができた、貴重なイベントとなった。

    原稿執筆:仲上 佳克

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  • 緊急ディスカッション! 大型アニソンフェスの現在地とは?

     「AnisongJapan」の初日を締めくくったのは、現在のアニソンシーンを大きく盛り上げる三大アニソンフェスのプロデューサーが集結し、2014年の大型アニソンフェス業界について熱く語るという趣向のイベント。登壇者は「Animelo Summer Live」ゼネラルプロデューサーの齋藤光二さん、「ANIMAX MUSIX」プロデューサーの薗田好豊さん、「リスアニ!LIVE」ブッキングプロデューサーの西原史顕さん。実は以前からお仕事を通しての交流があるというお三方だが、公の場で一堂に会するのはもちろんこれが初めてだ。
     まずは各フェスの特色について、司会進行を務める音楽評論家の冨田明宏さんがわかりやすく紹介していく。今年で10年目という歴史をもつ「Animelo Summer Live」は出演アーティストがレーベルを超えて参加するテーマソングやシンプルな演出、コラボレーションが特徴。また、アニソンフェスの「パイオニアたれ」という精神のもと、昨年と今年はさいたまスーパーアリーナでの3日間公演を敢行している。BS・CSのアニメ専門チャンネルであるANIMAXが主催する「ANIMAX MUSIX」はTV収録を前提としており、コラボに限らずアニメミュージックのカバーが多いことも特徴に挙げられる。さらに海外28か国で放送されるというのもANIMAXならではの強みだ。この中では最後発となる「リスアニ!LIVE」は各アーティストの専属バンドがそのまま参加する“乗り込みバンド”という形態を採用し、ノンタイアップ曲も積極的に演奏することやトークの時間を長めにとることでアーティスト自身の魅力により深く迫る内容となっている。雑誌やTV、WEBなどで展開する「リスアニ!」各メディアとの連動を強く打ち出しているのも特色だ。
     以上を踏まえた上で、3人のプロデューサーが熱のこもったディスカッションを展開。「乗り込みバンドと箱バンド、メリットとデメリットは?」「ノンタイアップ曲をどう扱うべきか?」「会場や演出の違い」といったテーマに基づいて、それぞれの立場から意見を交わした。「現在のアニメ音楽シーン」について、薗田さんから「よりアニメの映像にシンクロした音楽」を求めたいという意見が飛び出すと、同じ意見を持つ齋藤さんが「ライブの演出でアニメの映像を使うようになった」と明かす。それに対して西原さんが「『リスアニ!LIVE』ではアニメーションは使わない方針」と断言。各フェスの相違点が鮮明になるも、「スタイルの違いを楽しめばいい」という点では意見が一致した。
     最後に、今後も大型フェスを続けていくためのビジョンとして、齋藤さんが「全体として盛り上げていく」ことを提案。「いつかは“リスAnimeloMAX”の合同開催も!?」という発言に、会場から一気に歓声が沸き起こる。この日の「AnisongJapan」全体を通してアニソンの歴史と現在を見てきた冨田さんは「大型フェスは絶え間なく続くアニソンの目に見える象徴。この路線が続けば業界は安泰」と総括して、初日を締めくくった。

    原稿執筆:仲上 佳克

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    AnisongJapan Supported by リスアニ! 23日
  •  70年代から現在に至るまでのアニソン界の歴史を振り返る壮大なプロジェクト「Anisong Japan」。2日目の司会進行役は、1日目と同じリスアニ!レコMEN'sのお三方(アニソン専門誌「リスアニ!」編集長・西原史顕さん、副編集長・澄川龍一さん、音楽評論家・冨田明宏さん)。2日目は2000年代のアニソンをテーマに、ゲストとのトークセッション、ライブパフォーマンス等、多彩なプログラムが用意された。
     最初のプログラムは、"萌えソング"を世に知らしめたUNDER17(2004年に解散)のお二人を招いた「桃井はるこ&小池雅也~電波の系譜」。UNDER17が果たしたアイドル的アイコンとオタク文化との融合は、その後のアキバ系アイドル発展の萌芽となったという意味で、現在のアニソン界に残した足跡は大きい。トークでは今だから語れる解散の経緯や10年越しの謝罪など、会場を訪れた当時を知るファンを大いに沸かせた。
     2000年代を振り返る次なるスペシャルゲストは『涼宮ハルヒの憂鬱』や『らき☆すた』、『ラブライブ!』等を手がけるヒットメーカー、作詞家の畑亜貴さん。時代を掴み、常に一歩先の理想の少女像を紡ぎ続ける名作詞家の言葉は「"乙女"は女のコのやせ我慢」「恋に恋する女のコの世界には、実は男のコは存在しない」等、含蓄に満ちたものばかり。自身もアーテイストとして活躍中で、3/19にアルバム『愛するひとよ真実は誓わずにいよう』をリリースしたばかり。「劇薬なので、お手に取る際はぜひその前に試聴を」とのこと。
     次に用意されたプログラムは、アニソンの新たな可能性として注目を集める"アニソン系クラブイベント"をフィーチャー。秋葉原のDJバーMOGRAの店長・D-YAMAさんとDJ WILDPARTYさんがステージに立ち、アニソンDJ界の最新事情やアニソンDJプレイの実演などを通じて、新機軸なアニソンの楽しみ方をレクチャーした。
     最後のプログラムは、インターネット番組「電波諜報局」プロデューサーの瀬田蔵人さんとニュースサイト「ナタリー」記者の成松哲さん、レコMEN'sメンバーによる「赤裸々アニソンサミット~2014年の展望」。Web放送、Webメディア、紙媒体という異なる立場でトレンドと向き合うパネリストが、各業界の裏事情を赤裸々に暴露しつつ、これからのアニソン業界の動向、そしてメディアが目指すべき方向性について語り合った。至った結論は「これまでの40年間がそうであったように、これからのアニソン業界にも日々新たな潮流が生み出されていく。メディアに出来ることは、そのスピードに負けずこれからもそれを追いかけ続けていくこと」。人々が抱く夢や希望は、なくなることはない、アニソンの進化もきっと、これからもとどまることなく続いていくのだろう。

    原稿執筆:星 徹哉

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